[PRE-ORDER] 巨勢典子 - 軌跡
レーベル : ウィル・ハーモニー
品番:ESK-125
フォーマット:国内盤CD
発売日:2026年6月26日
記憶、祈り、再生——静かに心を揺らす全曲インストゥルメンタル作品
本作は、全15曲を収録したインストゥルメンタル・アルバム。繊細で叙情的なピアノ表現を軸に、記憶、祈り、再生、そして日々の美しさを丁寧に描き出した作品となっている。
Nujabes「reflection eternal」のサンプリングソースとしても広く知られる巨勢典子が、長年培ってきた感性と静かなまなざしをもとに紡いだ本作には、「Still I Miss You」「レクイエム」「やさしい追憶」「美しい日々」など、ひとつひとつの楽曲が異なる情景と感情を宿しながら並んでいる。時を越えて響く音の軌跡が、聴く者の内面へそっと広がっていく一枚だ。
『軌跡』は、巨勢典子がこれまで歩んできた時間そのものを、静かなピアノの響きで編み上げたようなアルバムである。全曲インストゥルメンタルで構成された本作には、言葉を用いずとも感情や風景を伝える彼女の表現力が、端的かつ豊かに刻まれている。ひとつひとつの音は過剰に感情を煽ることなく、しかし確かな温度を持って鳴り、聴く者それぞれの記憶や心の深部に静かに触れていく。
アルバム冒頭の「澪」は、タイトルが示すように、流れの中に見出される道筋を思わせる楽曲であり、本作全体の入口として穏やかで深い余韻を残す。続く「Still I Miss You」は、巨勢典子の代表的な旋律感覚をあらためて印象づける一曲であり、懐かしさと現在が交差するような響きが胸を打つ。「月色の波」「あした咲く花」「風の記憶 (2026)」といった楽曲群には、自然や季節の気配、時間の移ろいが滲み込み、聴く者の内側に眠る風景を呼び覚ますような力がある。
本作の魅力は、単に“美しいピアノ作品集”に留まらない点にある。「慈愛」「捧げもの」「レクイエム」「pray」には、祈りや喪失、他者へのまなざしといった深い主題が息づいており、静けさの中にある切実さが際立つ。一方で、「ハルカゼ」「美しい日々」では、やわらかな光や再生の気配が感じられ、アルバム全体に閉じすぎない開かれた印象を与えている。
『軌跡』というタイトルは、巨勢典子自身の歩みであると同時に、音が辿る道、そして聴き手の人生に残る痕跡をも意味しているように響く。Nujabes作品へのサンプリングで世界的に知られる存在でありながら、その核にあるのは常に、ひとつの音に誠実であること、そして聴く者の心に静かに寄り添うことである。本作は、その姿勢が最も純度の高い形で結実したアルバムであり、時間の流れの中で何度も立ち返りたくなる、静かな強さを持った一枚だ。